L’Étranger
お題「#おうち時間」
私はついさっきアルベール・カミュ著『異邦人』を読み終えた。
130頁弱という短さで不条理な哲学を持った男、ムルソーを描き上げたカミュをフランス文壇へ一躍押し上げた名作である。
カミュのその他の作品についても以前扱った。
やはりこの作品の難しいところは、語り口が誰によるのかという点だろう。
新潮文庫からの出版であった私の手許の本では白井 浩司氏による解説がある。
そこでは一つの見解が示されている。
それは、ムルソー自身の手で執筆されたというよりは、法廷でムルソーが視線を交わした、一人の新聞記者による聞き書きであると結論づけられている。
カミュの生涯において十年来の友人であったがのちに絶縁したサルトルについてもここでは軽く触れておきたい。
ジャン=ポール・サルトルとアルベール・カミュとの大きな違いは(もっともこの二人が混合されて意識される例が多いが違いの方が多い)生育環境ではないか。
サルトルは恵まれた環境の中で本に親しんだが、カミュは貧困の中に生きながら地中海の焼ける太陽に希望を見出していた。
サルトルについて面白い記事があった。
1935年に想像力についての実験のため、友人の医師・ラガッシュによってメスカリン注射を受ける。サルトルはこの際に全身をカニやタコが這いまわる幻覚に襲われ、以降も幻覚を伴う鬱症状に半年以上悩まされることになる。甲殻類に対する恐怖は生涯続いた。
カミュ・サルトル論争ののち彼らは完全に決裂した。その後のカミュの作品は以下である。
これからもカミュを追いかけ続ける読者でありつづけたい。